キャラクターの活用

 突然ですが、私はトイ・ストーリーが大好きで、ウッディ人形やMr.ポテトヘッドなど、年甲斐も無く収集しています。はじめてトイ・ストーリーを見たのは高校生の時でした。しかし、今でもグッズを見ると、欲しくなります。キャラクターというのはそれほど、人のハートに訴えるものがあります。
 さて、近年では「ひこにゃん」や「ふなっしー」の例をいまさらいう必要もなく、キャラクター達の町おこしへの貢献度が高いことは周知の事実です。そして、自治体や独立行政法人等の公的機関に止まらず、各民間企業も積極的にキャラクターを活用しています。

ゆるキャラとは?

 これら、公的機関や民間企業がキャラクターを用いる際、「ゆるキャラ」と呼ばれることが多いようですが、どうもゆるキャラには「ゆるキャラ三か条」というものがあり、ゆるい可愛さを持ちユニークで不安定な郷土愛を表すキャラクターを指すようですので、ここではあえて「PRキャラ」と定義させてもらいます。

PRキャラの誕生

 PRキャラが生まれるとき、企業などで結構ノリだけで「○○を擬人化してみたら、面白くない?」という案が出て、デザイン会社に正式なキャラ化を委託するケースと、当初から抽象的なコンセプトを掲げて公募をかけるケースが多いように思います。

《出典:国立循環器病研究センター知的資産部「広報活動・研究成果<ポンプーとは>」》

 上記の例は、ノリとかでなく、事前に戦略的な構想を持ってきちんとしたキャラクターを創作された例ですが、PRキャラクターを擬人化するわかりやすい例なので、取り上げました。この時点で後々、問題が生じる可能性があるケースをいくつか取り上げておきます。

(a)社内の誰かがノリで殴り書きしたものがデザイン会社によりキャラ化(清書)されたケース。
(b)公募によりイラストのみが募集され、特に活用例を想定していないケース。
(c)コンサル会社等が入念なキャラクター観や設定を監修し、下請会社や個人イラストレーターにキャラ化を委託したケース

キャラクターの権利者

 キャラクターに関する法務では、著作権や民法を中心に、商標権、意匠権、不正競争防止法などを検討する必要があります。ちなみに、現場ではよく商品化権という言葉や監修という言葉も出てきますが、これらは法律用語ではありません。
 会社などに、キャラクターが生まれた時は自然発生的に著作権が発生します。この著作権は「著作者人格権」と「著作財産権」という二種類がありますが、詳細は割愛します。
 問題は、誰が著作権を取得するのかです。先の事例で検討すると、(a)の場合、大雑把に言えば「殴り書きをした社員」ということになりますが、この殴り書きしたものと完成したキャラがあまりにかけ離れていると、「社員=原案」、「デザイン会社=著作権者」となる可能性もあります。
 また、就業規則の規定内容や企画の出所、公表名義などの事情によって、社員ではなく会社そのものに著作権が帰属します。
 (b)の場合はもっと複雑です。(b)では明らかに応募した方に著作権が発生するのですが、こういった公募では多くの場合、著作権が公募した側に譲渡されるよう取り決めがあったりします。ですが、先に述べた「著作者人格権」は法律上、譲渡できないことになっていますので、「著作者人格権者=応募者」、「著作財産権者=募集側」となり、当初から権利関係は複雑です。この事例は有名な「ひこにゃん事件」が思い出されます。
 ちなみに著作者人格権というのは、著作者自身の人格と深く結びつくため、譲渡不可能とされており、「勝手にキャラクターを改変してくれるな!」と言える権利です(他にもあります)。
 公募キャラの場合、イラストのみを募集することになりますので、いわゆるキャラの設定(性格とか口癖、好み等)どころか、シュチェーションやコスチュームにいたるまで、好き勝手に改変され、原著作者とキャラ使用者との間でトラブルがおきやすいのです。
 (c)では、@コンサル会社が原著作者、A下請会社が原著作者、Bコンサル会社と下請会社の共同著作物、と様々考える余地があり、もう訳がわからないのですが、ストレートに解釈すれば、下請会社が原著作者とすることが多くなると思います。
 なお、(a)〜(c)のケース,いずれも実際の状況で二転三転しますので、ご注意ください。
 こういった事情に加え、商標権だとか意匠権、不正競争防止法などを検討するので、本当にキャラクターの管理は骨が折れます。

その他の権利

 著作権以外はとう検討するのか? は事案によってかなり変わりますので、アウトラインの部分のみ説明しておきます。

 

 Aをご覧ください。このように、万が一、キャラクターが法人の提供する商品やサービスについて、他のものと区別するために名称やロゴとともに付けられていれば商標としての保護が検討されます。単に漠然と「法人のPRキャラなんです」という場合は商標とはいえません(法人から連想される限られたサービス等あれば別です)。
 Bでは、ストラップやぬいぐるみなっています。このような商品にできるのは「商品化権」や「著作権の使用許諾」を得ている者に限られます。
 また、こういった製品化について新規性があり、創作するのが容易でないという要素があれば、意匠としての保護も検討できます。しかし、多くのPRキャラクターの場合、ぬいぐるみやストラップ(フィギュア)での意匠保護は難しいと思われます。先例としてスヌーピーやウルトラマンなどの意匠登録の例がよく言われますが、いずれも特殊な事情で、現実的な検討ではないのです。むしろ元の人工心臓の意匠登録の方はできるのですが・・・。
 不正競争防止法では、商品の機能を確保するために 不可欠な形態があり、それを丸々模倣されたような場合に問題となります。ぬいぐるみではなかなか難しいとは思うのですが、一番はじめに述べたようなMr.ポテトヘッドなんかは意匠権でも不正競争防止法でも保護される好例でしょう。

やはり主軸は著作権

 このように、やはり企業がPRキャラを育てていくのであれば、まずは著作権を重視します。
 保護の方法はいくつかあるのですが、大前提は権利関係を整理するための契約書類の整備です。これには企画からキャラ誕生までに関わったすべての当事者の合意が必要です。合意さえ整っていれば「制作委託契約書」、「著作権譲渡契約書」、「監修契約書」等を駆使して、当事者全員にメリットのあるWIN-WIN-WINな関係を築けます。
 この際により強固な安心を得るためには公的な証明を得ることです。初期段階でしっかり対処していれば、後々トラブルになることはあまりないのですが、それでも「もしも」の時に備えて公的な証明力は必要です。
この際に活用できるのが

 ・文化庁への著作権登録
 ・公証役場を活用した公証人の形式的証明

 の二つになります。先の権利関係の整理を前提に、これらの事実を文化庁に登録することができますが、これは行政書士の業務となっています(意外と知られていません)。
 また、権利関係を整理するために整備した契約書類を公証役場で公証しておけば、万全と言えます(ここまではやりすぎの感もあるくらいです)。
 当事務所では数多くのPRキャラクターをはじめとした企業等の知的資産の活用を支援してきました。ゆるキャラをはじめ、著作権に関わる資産を生み出す場合、生み出した後など、気になることがあれば、いつでも気軽にご相談ください。

料金の目安

著作権譲渡契約書:¥30,000〜¥80,000(税抜)
著作物利用許諾契約書:¥30,000〜¥80,000(税抜)
著作権の登録申請:¥50,000(税抜)
存在事実証明作成:¥30,000(税抜)
著作権侵害に対する告訴:¥50,000(税抜)
著作権侵害予防法務:¥20,000(税抜)/月(税抜)


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